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胃癌について

胃癌は、胃の粘膜細胞から発生します。胃にできた癌は固まりになってイボのように隆起したり、癌のところが潰瘍のように凹む場合が多く、バリウムによるレントゲン検査や内視鏡検査で胃の内容の異常な凸凹や、色の変わったところを詳しく見ることで診断が出来ます。時々、粘膜から出来た癌が表面に発育しないで、粘膜の深いところを這うようにして増えていくことがあり、このような場合には早期の診断は難しくなります。胃の壁は粘膜(表面の粘膜(M)とその下の粘膜下層(SM)に分けられます)、その下の厚い筋肉層(MP)、一番外側の薄い膜(漿膜(S)といいます)でできています。がん細胞が胃壁のどの層まで達しているか(深達度)は、Tという文字で表現します。胃癌が粘膜(M、SM)にとまっている場合をT1といいます。筋肉層まで進んでいるけれど、胃の外側表面には出ていない場合(MP)をT2、外側表面の膜(S)を破って胃の表面に出てきている場合をT3といいます。胃癌が胃の外側表面に出て、さらに大腸や膵臓など、他の内臓に直接入り込んでいる場合(浸潤)をT4といいます。

胃癌は、リンパ管や血管に入り込んで、リンパ液や血流の流れにのって、胃から離れた場所に飛び火(転移)します。また、胃癌が胃の一番外側のS膜を破って、お腹の中に種をまいたように広がる胃癌特有の腹膜播種性転移(ふくまくはしゅ)という飛び火もあります。転移したリンパ節は、胃から広がるにしたがって、N1からN3へと分類しています。胃癌の深さ(T)、リンパ節転移の程度(N)、血管を伝わって肝臓や肺に転移しているか、または腹膜播種性転移があるか(M)などの因子で、胃癌の進み具合(病期、ステージ)と治療法が決定されます。

当科の治療方針概要

1.内視鏡的粘膜切除術 Endoscopic mucosal resection EMR

適応

2cm以下の肉眼的粘膜癌(M)と診断される病変で、がん細胞の顔つきが良い分化型。

方法

内視鏡的に胃の病変部を挙上してスネアをかけ、高周波により焼却切除します。特別な液を注射、透明プラスチックキャップ吸引して、組織を切除します。

2.縮小手術

適応

EMRの対象とならない粘膜(M)癌で、手術中リンパ節転移がないと判断される症例。
また、胃の周囲だけのリンパ節の摘出(郭清)で治癒が期待できる症例。

方法

2/3以上の胃切除と中範囲のリンパ節郭清をする定型手術に対比して、切除範囲の縮小あるいは病変や胃の周囲だけのリンパ節郭清を行います。腹膜鏡下での局所切除や分節切除も含み、お腹の神経(迷走神経)を可能な限り温存します。

3.定型手術

適応

他の臓器に浸潤がない深達粘膜下層(SM)以上漿膜浸潤T3(SE)以下の腫瘍で、中範囲リンパ節郭清で治癒が期待できる症例。

方法

従来から、標準的に施行されてきた胃切除法で、胃の2/3以上切除と、中範囲リンパ節郭清を施行する術式。開腹後、お腹の中の洗浄細胞診にて腹腔内にがん細胞の有無を確かめます。また、中範囲以上のリンパ節転移の可能性を推測するため、手術中にリンパ節転移の有無を迅速病理診断で確かめ、陽性の際は拡大手術(次項参照)とする場合もあります。胆嚢を合併切除する場合もあります。

4.拡大手術

適応

胃癌が胃の周辺の臓器に浸潤していたり、合併切除をしないと治癒が望めない症例、または中範囲以上のリンパ節転移があり、根治手術を目指して中範囲以上(拡大)のリンパ節郭清を必要とする症例。

方法

定型手術を超える胃切除術式で、他臓器合併切除あるいは拡大リンパ節郭清も含まれます。また、胆嚢も合併切除します。定型手術を予定していた症例で、中範囲の中で一番離れたリンパ節に転移が、迅速病理診断陽性の場合も拡大(傍大動脈)リンパ節郭清を施行する場合もあります。

5.非治癒手術(減量手術、姑息手術)

根治手術が望めない進行胃癌症例で、腫瘍の量の軽減を目的とした減量手術、あるいは切迫した症状(出血、狭窄、低栄養、低蛋白血症など)の改善を目的とした姑息手術(単切除、バイパス術、栄養瘻造設など)が含まれます。

6.化学療法

胃癌は、化学療法に中等度の感受性があるとされますが、手術不能胃癌あるいは、手術適応のない再発胃癌、癌が取りきれなかった症例を化学療法のみで完全に治すことは困難です。現在、術後補助化学療法や術前化学療法も含めて、種々の単剤、多剤併用化学療法の臨床試験が行われています。当科も大規模の臨床試験グループに積極的に参加し、延命効果を指標とした臨床研究を推進しています。

7.放射線療法

胃癌は、放射線感受性が低いので、本療法のみで胃癌を治すことは困難です。狭窄や癌浸潤による疼痛などの緩和に有用なことがありますが、用いることはほとんどありません。

8.緩和ケア

終末期の患者様、あるいはそのご家族に対して積極的に行われる全人的なケアの総称です。当科スタッフでの話し合いを参考に、疼痛などの肉体的苦痛や精神的不安を可能な限り排除するように心掛けます。

9.免疫療法

未だ確立した治療はありませんが、保険適応となっている薬剤もあります。その他、自由診療になるため当院内では致しておりませんが、リンパ球活性化療法については、他院にご紹介致しております。具体的なご相談は担当医に気兼ねなくご相談ください。

10.現在進行中の臨床研究

ガイドラインで日常臨床として示された通りに治療しているだけでは、胃癌の治療成績が今より格段にあがることはありません。そこで、より安全な方法で少しずつ工夫を加えて、更にたくさんの患者様が胃癌を克服できるような治療が試みられています。これを臨床研究といいます。これには、試みるに値する科学的な根拠と安全性がある程度約束されていると考えられます。この中には、近い将来、日常診療として採用されるものもあります。具体的なご相談は担当医に気兼ねなくご相談ください。

当科の具体的な切除および再建術式

1.幽門側胃切除

病変が胃の中部・下部領域に限局。再建はBillrothⅠ法、BillrothⅡ法(w/Braun吻合)、Roux-en-Y変法などが用いられますが、当科では前二つを主に採用しています。

2.胃全摘

病変が胃の上部に浸潤し、深達度やリンパ節郭清のために胃全摘が必要な症例。腫瘍が食道へ2cm以上浸潤していたり、縦隔リンパ節転移が疑われる場合、開胸術を伴う時もあります。再建はRoux-en-Y法が主です。

3.噴門側胃切除

上部に病変が限局し、深達度がMPまでの場合に行います。腫瘍局在が大弯線にかかる時は、
脾臓を摘出することもあります。再建は多くの場合、空腸間置(パウチ)を行います。

4.胃局所切除

粘膜切除と縮小手術の中間に位置づけられる手術です。小開腹あるいは腹腔鏡下に一部の胃壁全層を切除する術式ですので、ほとんど残胃の形態は変わりません。狭い範囲の切除であるため、術後のQOLは極めて良好なことが期待されます。

手術に伴う合併症

手術に伴う合併症を以下に表記していますが、全て一定の割合で起こりうるものです。もちろん、合併症の予防や治療には全力をあげますが、ごく稀に致死的なこともありえます。具体的には、主治医または担当医から説明を致します。

  • 術中または術後出血
  • 縫合不全
  • 膵炎・膵液漏
  • 癒着性腸閉塞
  • 腹腔内膿瘍
  • 吻合部狭窄
  • Roux-en-Y症候群
  • 胆嚢を摘出した際の胆汁漏
  • 術後胸水、腹水、リンパ液貯留

全身麻酔下外科手術における一般的合併症

  • 肺炎、無気肺、肺水腫
  • 脂肪閉塞や深部静脈血栓症による肺梗塞
  • 心筋梗塞、脳梗塞
  • 不整脈
  • 術後創感染、創部離開、腹壁瘢痕ヘルニアなど

手術後起こり得る後遺症

胃癌の手術後には、色々な後遺症がありますが、その代表的なものをあげておきます。これも具体的には主治医または担当医から説明を致します。

  • 腸閉塞
  • ダンピング症候群
  • 貧血
  • 骨粗しょう症
  • 逆流性食道炎
  • 胃手術後胆石症

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胃癌に対する治療方針について